大阪高等裁判所 平成10年(行コ)76号 判決 1999年7月23日
控訴人
清水隆昭
控訴人
清水光治
控訴人
副田久義
右三名訴訟代理人弁護士
本家重忠
被控訴人
奈良税務署長 加藤賢一
右指定代理人
高橋伸幸
同
山本弘
同
水垣修一
同
別府哲郎
同
間佐古佳紀
主文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
二 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が控訴人らの平成五年一月一二日相続開始に係る相続税について、いずれも平成八年五月一五日付けでした、(1)控訴人清水隆昭に対する更正のうち課税価格一億〇一五九万円、納付すべき税額一九〇一万八〇〇〇円を各超える部分及び過少申告加算税賦課決定、(2)控訴人清水光治に対する更正のうち課税価格一億〇一〇一万円、納付すべき税額一八九一万円を各超える部分及び過少申告加算税賦課決定、(3)控訴人副田久義に対する更正のうち課税価格一億〇一〇一万円、納付すべき税額一八九一万円を各超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし、各更正はいずれも平成八年一〇月七日付異議決定による一部取消後のもの。)をいずれも取り消す。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文同旨
第二事案の概要
事案の概要は、次のとおり付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要一ないし四」(原判決二頁八行目から一〇頁四行目まで)記載のとおりであるからこれを引用する。
一 原判決八頁九行目の次に、次のとおり加える。「すなわち、被相続人は、戦後復員して以来、青果会社に勤務し、その後昭和三八年から同五〇年まで町会議員に、昭和四一年から平成二年まで農業委員に就任し、昭和五〇年から同五五年まで建設会社の社長として就労し、農業には従事していない。」
二 原判決八頁一〇行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「控訴人隆昭の母ヤスエは、昭和一七年六月二六日寅松の死亡により同控訴人が本件各土地の小作権を家督相続して以来同控訴人に代り同地を耕作していたところ、同控訴人の代理占有者として昭和二二、二三年の本件売渡処分が同控訴人に対してなされたものと信じて、以来、所有の意思をもって占有を続け、同控訴人が成人となった昭和三五年には、同控訴人が自ら耕作するに至った。右のとおり、控訴人隆昭は、母ヤスエを通じて、昭和二二、二三年の右売渡処分の時点において、従来の地主占有から自主占有に転換し、それ以降は所有の意思をもって本件各土地を占有し続けてきたのであるから、それから一〇年又は二〇年の経過をもって本件各土地を時効により取得した。よって、本訴において、右時効を援用する。」
第三判断
一 当裁判所も、控訴人らの被控訴人に対する本訴請求は、いずれも棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり改めるほか、原判決の「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」(原判決一〇頁八行目から二二頁三行目まで)記載のとおりであるからこれを引用する。
1 原判決一四頁八行目の次に行を改めて、次のとおり加える。
「控訴人らは、被控訴人が戦後復員して以来、青果会社に勤務し、町会議員、農業委員の公職に就いたり、建設会社社長として就労していたと主張するけれども、これらの事実があったとしても、そのことが直ちに本件売渡処分当時被相続人が農業に従事していなかったことの証左となるものではなく、証拠(乙一八)によれば、被相続人は、これら公職、会社役員としての仕事の傍ら稲作等の農業に従事していたことが認められるのであるから、控訴人らの右主張は採用の限りでない。」
2 原判決一九頁四行目の次に行を改めて、次のとおり加える。
「(三) 控訴人らは、控訴人隆昭の母ヤスエが同控訴人の代理占有者として本件売渡処分時まで本件各土地を耕作してきたところ、右売渡処分により同控訴人が右各土地の所有権を取得したものと信じて自主占有を開始し継続したと主張する。
右のように他主占有が自主占有に転換したといえるためには、占有者の単なる内心意思の変化ではなく、外形的・客観的にみて占有の態様に変更があったと認め得る事情の存在を要するところ、本件売渡処分の時点において、右の事情が存在したことについては、何らの主張、立証がない。
したがって、この点に関する控訴人らの主張もまた失当である。」
3 原判決一九頁五行目の「(三)」を「(四)」と改める。
二 以上によれば、控訴人らの被控訴人に対する本訴請求は、いずれも失当であるから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法六七条一項本文、六一条、六五条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 根本眞 裁判官 鎌田義勝 裁判官 松田享)